離れていても子育ては出来る
単身赴任を避けたい理由のひとつとして「子どもがいる」、「家庭がある」ということが挙げられるでしょう。できれば子どものそばにいて子育てをしたい、できれば家族とは離れたくないという気持ちがあるから「単身赴任」が嫌に感じるのです。
ですが、直接そばにいれなくても、子どもを育てることはできません。子どもの成長を左右するのは物理的にそばにいることではないのです。たとえそばにいることができなくても、親としての「存在」を感じることができれば子どもは育ちます。親としての存在とは、「こんなに頑張っているんだぞ」という姿勢であったり、「離れていても気にかけているよ」ということであったりするでしょう。親としての自分の存在をどのようにして子どもに伝えるのか、自分が仕事で遠くにいるということを、どのようにして子どもに伝えるのか、実感させるのか、それを考えることによって「子どもが親として」しっかりと影響を受けてくれるのです。
父のようになりたい、母のようになりたいと考えることから、子どもは成長するものです。自分がどのようにして育って、どのようにして今社会で生きているのか、それを思い返してみてください。自分自身の父と母は、自分にとってどのような存在であったのか、思い出してみましょう。いつも一緒に遊んでくれたという記憶が多分にある人もいるでしょう。対して父親がずっと海外赴任していたという人もいるでしょう。それでも、そのような親から何かを学んで、何かを感じて、育ったのではないでしょうか。もしかしたら「あんな大人にはなりたくない」と思いながら成長した人もいるかもしれません。それはそれで親から影響を受けて成長したことになるのです。
親と子どもの関係は、死んでも続くものです。人は人からしか生まれないもので、人と人の関係の最小単位が「親子」です。人は自分の親を選べませんし、自分の子どもも選べません。自分が自分でいるもっとも原初の「理由」、それが「親」です。
ただ、そんなことは成長してはじめて気がつけることであって、「今成長している」子ども自身はそんなことを微塵も考えないのです。今日楽しかったこと、そして明日もっと楽しめることを中心にして、子どもは成長していきます。その中で、「親」としての自分がどのようにしてその子どもに影響できるのかを考えましょう。その子が成長してから、自分を育ててくれた両親のことを考えたときに、どういう存在でいれるのかを考えましょう。
人が学んできたものは、いつ役に立つかわからないものです。成長した結果、どのようなことが、どのようなものが役に立つのかはわからないのです。だから子どもにはさまざまな経験をさせてあげるべきで、可能性を広げることに対して育てる側が貪欲になる必要があるのです。私たちにとっては何気ないことでも、子どもにとっては大冒険であることも多々あります。親が離れたところにいて、休みの日などに帰ってくる、自分の大切な記念日には欠かさず帰ってくる、そんな存在でも、十分子どもにとっては「親」なのです。子どもを育てると同時に、自分も成長する必要があるのですから、経験を積むための赴任であれば、意を決して飛び込んでみましょう。