「経験」は財産になる
単身赴任はできれば避けたいと考えている人がほとんどなのではないでしょうか。ですが、「経験」という意味では他の同輩よりも多くのものを得られる機会を得たということになります。
人は「勉強」するだけでは成長できないものです。何事も重要になるのは「経験」です。さまざまなことを経験することによって実践に強い、応用力のある人材に育っていくのです。学生から社会人になったとしても、人は「成長」をやめることはありません。そして、それが「自覚」できる人ほどより伸びるのです。私たちにとって経験とは財産であり、経験を積むことができる「場」というものほど貴重なものはないのです。
社会人になりたての頃は仕事についていくのがやっとだったでしょう。そして、やがて慣れてくると自分よりも仕事ができる先輩、場数を踏んでいる先輩に対して「どうすればあのように手慣れたものなるのか」という羨望にも似た疑問を持ったことでしょう。自分と同じように教育を受けてきた人が、自分よりもはるかに仕事に対して馴れている、そして経験を積んでいるということが、なんだか悔しかったのではないでしょうか。
「仕事ができる」、「仕事ができない」ということは「勉強がよくできる」、「頭が良い」ということとはまったく別の次元であるように思えます。仕事ができる人が学校の成績が良かったわけではありません。仕事ができる人が良い大学を卒業してきたわけではないのです。社会に出ると学生の頃に大切にしていたこと、テストの点数、勉強の良し悪しなどはくだらないことのように思えてくるでしょう。そのような景色を創りだす、働く「人」、そして「仕事」という生涯を左右するフィールドに、私たちは翻弄され続けるのです。
単身赴任によって新しい土地で仕事をするということは、見知らぬ相手、あまり関わったことがない相手と新しい信頼関係を築くということです。社会は人が回しているものですから、新しい信頼関係こそがそのビジネスにとってもっとも重要な要素となるわけです。私たちの暮らしにとって「仕事」とは決して軽んじることができないものであり、私たちの暮らしにとって「信頼」とは自分のフィールドをどこまで広げることができるのかというバロメーターでもあります。そのような「新しい関係」を作る機会を得るということは、経験を積むという意味では「チャンス」なのです。
私たちはそれぞれ「働く」ことに心血を注いでいます。働くことは私たちにとっては生きることと同じような意味を持ちます。仕事上の経験値とは、生きる上での経験値と同じなのです。より良い生活を手にするために、より良い暮らしを手に入れるために、私たちはより経験を詰める「場」、フィールドを探すべきであり、そのフィールドをどれだけ多く手に入れることができるのかということが、「人生の質」自体を左右するのです。楽をしたい、波風が立たない暮らしをしたい、できれば自分ができることしかしたくないというような希望は、その場だけの「逃げ」であり、自分が成長できないという点では人生にとって「損」をしているということになるのではないでしょうか。よりよく暮らすためにも、率先して「経験」を詰めるようなフィールドを求めるべきなのです。