単身赴任とは家族とは離れて自宅からでは通えないような場所で勤めることです。家族とは離れなければいけないということで、少しさみしかったり、暗いイメージを持ったりする言葉です。
私たちは誰もが仕事を持っているものです。自分が責任を持ち、科せられたタスクを完遂することが基本で、会社に勤めていればそれは組織上の上長から降りてくるものです。そのようなタスクのひとつひとつを淡々とこなすだけでは成立しないということも起こりえます。組織で働いている以上、その組織が求めていること、必要としていることには差があるもので、それらの中にはただ「真面目でいる」ということや「頭の回転が速い」ということだけでは成立できないものもあるのです。それは「あの場所で」という物理的なものが加わる場合です。組織人でいる以上、自分の事情は差し置いて組織の命令に従わなければいけないものなのですが、その命令の中に「違う勤務先で」という内容か含まれている場合、「引越し」を余儀なくされることもあるでしょう。
家族がいない単身の身であれば、それはそれで受け入れやすいものです。自分だけが転居すれば良く、引越しの段取りさえつけることができれば後は新天地で今まで通り、今まで以上に働くだけです。ですが、「家族」がいる場合はそうはいかないのが現実です。自分だけではなく、家族と共に暮らしているのであれば、その家族と共に転居するのか、それとも家族を残して自分だけ転居するのかを考えなければいけません。転居はそう簡単なことではありません。さらに、自宅を購入していたりすると簡単に転居するわけにもいきません。私たちには「住む家」が絶対的に必要ではあるのですが、それらの「住居」もまた、簡単に手に入るようなものではないのです。
ですから「家族を残して自分だけが赴く」という選択肢もあるのです。それが「単身赴任」です。仕事のことですから、自分の事情を差し挟むわけにはいきません。仕事のことですからそこに甘えは認められないことが多いのです。そのようなときはどうしても自分だけが移動する必要があります。自分だけが転居して、家族はもとの場所で暮らしながら、仕事をするのです。
それは一種の「出稼ぎ」のようにも見えます。家族を養うために働いているような状態なのであれば、まさに出稼ぎです。仕事だけが人生ではありませんが、仕事をしなければ生活できないということも大いにあります。「稼ぐ」ということは人の責任のなかでももっとも基本的なことであり、それを続けることで生活を成立させたり、老後の備えをしたり、子どもの進学費用などを蓄えたりすることができるのです。その「稼ぐ」ということの難易度は人それぞれです。境遇によっても違います。「自分だけがなぜ転勤に」と嘆く人もいることでしょう。ですが、何事も「経験」が大切であり、その組織の中で「転勤」していたという事実が後々になって「キャリア」に生きてくる場合も大いにあるのです。
仕事というものは、辛く考えれば辛くなります。楽しく考えれば楽しくなるものです。「引っ越したくない」と考えるのではなく、新天地でのチャンスを掴めたのだと、前向きに考えてもいいのではないでしょうか。